いきるばのブログ

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『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』

 森達也さんが撮ったドキュメンタリー映画『A』をご存じでしょうか。オウム真理教とその信者の実状に外からではなく、内から迫った作品です。当時は、教団の宣伝に使われているという批判もありました。

 安倍晋三元首相銃撃事件から1ヶ月が過ぎ、旧統一教会・世界平和統一家庭連合の実態や山上容疑者の生い立ちが明らかにされていくにつれて、初めて『A』を観たときのことが思い出されます。

 『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(森達也著)は、2016年に相模原市で起きた「相模原障害者施設殺傷事件」と、それまでに起きた無差別殺人事件や司法制度の問題などが根っこでつながっていることを明らかにしようとしています。

 タイトルにある“U”は、『A』の「Aum(オウム)」と同じく犯人(植松死刑囚 ※再審査請求中のこと)のイニシャルであり、あちら側からみた“you”、、、つまり読者である“me”を意味しています。森達也さんの敢えて客観的であろうとしない“人間臭い”ノンフィクションスタイルは、『A』から一貫していると思います。

 安倍晋三元首相銃撃事件については、まだまだわからないことが多くあります。本書は他人を断罪するのではなく、同じ一人の人間として考えるきっかけになる一冊です。

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